まりんを見送った日々 1

〜突然のお別れ〜

サイトを再開する時には、“あの日”のこと、そしてまりんへの想いを、きちんと言葉にしてからにしようと….ずっと思っていました。

それは、自分たちの気持ちを整理する為でもあり、何より、あの怒濤の日々は、私達家族にとって、とても悲しく、とても大切な記録だから…。

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それは、9月3日の朝のこと。

私(母A)の喘息が酷い期間、いつも、うさママ担当となってくれる母Bが、うさご飯の後、心配そうな声を出して、うさ部屋から戻ってきた。“まりんの様子、何だかおかしい気がする….”

“いつもの食欲不振??”と聞くと、“それとは違う”って。いつものように、ケージから出して部屋の中で遊ばせ始めたら、片足がつったような妙な動きをして、自分からケージに戻ってしまったらしい。ただ、朝ご飯のペレットには口をつけないものの、夜中に置いた野菜はしっかり完食してるし、牧草もそこそこ減ってはいた。昨夜のうさ遊びタイムも、元気いっぱいだった、まりん。

すぐにうさ部屋に行ってみると、まりんは牧草を一本口にくわえハムハムしていて、特に心配な様子は無さそうに見えた。でも、私以上にう〜さん達の異変には敏感な母Bの言うこと。用心の為、まりんを病院に連れて行くことにした。

が、この日はあいにく、主治医が臨時休業(病院スタッフの結婚式)。いつもは診療している日曜日だけれど、今日に限っては、他の病院を探さなければならない。

市内の動物病院は、東京のように、システムとして「年中無休、24時間受付」を謳っている病院は無い。そのかわり、自宅で開業している先生が多いせいか、「夜間でも休診日でも、とりあえずお電話ください。対応できれば診察します」という病院はいくつかある。

まりんの様子から、本当に“用心の受診”くらいに考えていた私達は、比較的落ちついて、いくつかの病院に電話をし、うさぎさんの不正咬合の手術ができる病院かどうかを判断基準に、今日お世話になる病院をしぼりこんだ。

そして、ウチから車で15分くらいの場所にある病院へ、母Bがまりんを連れて行った。

初めてお世話になった、その病院の先生に、まりんのこれまでの病歴をお話ししたら、「うさぎさんもお母さんもがんばってるね」って驚かれたらしい(たしかに、既に今年度分のアニコム保険証もほぼいっぱいまで使ってたし;;;)。

とても丁寧に診察してくださった結果、お腹の張りもなく、熱も脈も正常。心配していた脚の麻痺のような症状も、診察台の上では出ず、レントゲンなどの詳しい検査も、この時点で必要ないのでは…との診断。

たまたま、その女医先生が、ウチのかかりつけの先生のことをご存じだったこともあり、「○○先生は私も尊敬する、うさぎの権威。今のまりんくんの様子は、特に心配するような点は見つけられないけれど、もし明日も食欲不振が続くようなら、ウチのことは気にせず、いつも通り○○先生に診ていただいてね」と、気遣っていただいた。

まりんは、食欲アップの注射を打っていただいて、帰宅。

帰宅後すぐに、牧草を口にしたのを見て、私達は、胸をなで下ろした。

その日は、念のため母達がずっと交替でまりんを見ていたが、午後になって、まりんが気になる動きを見せ始めた。

どの姿勢で横になっても落ちつかないらしく、しきりに、寝返りをうって、ポジションを変えている。

ただ、いつもの食滞の時に見せる、じ〜っと動かない沈鬱の不調とは違い、目もイキイキとしてるし、活気は充分にある。ケージに手をいれると怒ったりして、むしろ興奮してるかのようにさえ見える。どこかが痛くて、イライラしてるのかもしれない…。

再度、午前中に診ていただいた病院に電話。そして、この日、二度目の通院。

歯と胃腸のトラブルを鑑みて、レントゲン写真を撮っていただいたが、そちらの先生の見立てでは、歯にしても胃腸にしても、重大なトラブルを引き起こすような原因は見あたらないとのこと。(普通、何らかのトラブルで食滞を起こしている子は胃腸にガスが溜まるが、まりんの胃腸にはガスも溜まっていなかった)

ただ、体温も脈も、午前中より少し下がっていた為、皮下点滴を打っていただいた。

循環器系にハンディを持つまりんは、これまでも何度か低体温になってきたけど、そういう際、皮下点滴に劇的に効果があることを分かっている私達は、この処置で、かなり安心した。

点滴を打って帰宅したまりんは、なでてみると、病院に行く前よりは、少し体温も上がってきている。

通常のレントゲンで原因が判明しないとなると、その上の段階は、バリウム検査。それは、やはり通い慣れた主治医に頼みたい。とにかく、明日、朝一番で主治医を受診しようと姉妹で話し、また、交替でまりんを看ることに…。

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夕方〜夜にかけて、まりんの様子は、とくに変わらないようにも、一進一退というようにも見えた。

二度の通院で疲れきって眠っているのか、衰弱が始まっているのか、正直判断しかねたけれど、ウンチもしっこもちゃんと出ていたし、時々顔を起こして、牧草を口にする行動が、私達を勇気づけてくれた。そういう時のまりんの瞳には、しっかりと活気があった。

ただ、深夜12時をまわり、さすがに翌朝の主治医の診察開始時間、8時半を待つことに不安を覚えた私達は、主治医の留守番電話にまりんの様態を話し、もし、早朝診療が可能であれば…と、依頼のメッセージを残した。

1時間でもいいから、早く、主治医のもとに駆け込みたかった…。

すぐに朝が来ればいいのに…そんな思いでいっぱいになりながら、交替でまりんを見守る….。疲れてるまりんの眠りを妨げたくはないけれど、顔をあげている時は、つい、なでてしまう….。

頑張れ、まりん。絶対に、負けるな。

1時ちょっと前。私が、猫部屋でラピルナの相手をし、母Bがまりんについていた時間帯、うさ部屋で母Bが私を呼んだ。「まりんが顔をあげていられなくなった」「主治医が開くまで待っていられないから、昼間行った病院に電話する」と。

確かに、横たわったまりんは、完全に首をうなだれるようにして寝ていた。時々、視線をあげると、その瞳の輝きはしっかりしてる。けど、明らかに顔を上げているのが辛そうだ…。

幸い、すぐに先生と連絡がとれ、今からでも診てくださるとのことだった。

タクシーが来るのを待つ間、母Bが言った。「もし、この子がもうお爺ちゃんなら、万が一の時はこのまま家で看取りたいと思うけど、まりんはまだ若い。あの時、病院へ連れて行ってたら助かったかも…っていう後悔を残したくはない。絶対大丈夫だって信じてるけど、病院でもしものことがあったら、私だけが看取ることになるけど、それでもいい?」と。

私は、頷いた。これまで、何度も命の危機をのりこえてきた、まりんだもの。今回も、絶対に帰ってくると信じてた。

まりんと母Bが病院へ出かけたのは、深夜1時過ぎ。出かけてすぐに、りゅうが2回スタンピングをした。私の耳には、まりんに「頑張れ!!!」ってエールを贈っているようなスタンピングに聞こえた…。

それから、30分くらいして、それまで落ちついていたラピが、急に慌ただしく玄関の方へ走って行った。車が停車する音がしなかったから、まだ母Bとまりんが帰って来ないことは確かだ。「ラピくん、気のせいだよ」私自身落ちつかないから、そういって、ラピを猫部屋に連れ戻し、廊下への扉を閉めた。

ラピは、扉の前にじっと座り、やはり玄関を凝視してる。

その顔、初めて見るようなラピの表情。とても悲しそうな瞳。

胸騒ぎを覚えて、思わず時計を見てしまった。時間は、1時45分を回ったところ。

きっと、先生の処置で、よい兆しが見えてる頃に違いない….そう思って、祈り続けた。

2時ちょっと前、母Bの携帯から電話。「まりんの状態、落ちついたから、今から帰るよ」…その言葉を期待したけれど、電話口から聞こえた姉の涙声は
「まりん、最期までがんばったよ。さっき、桃姉に迎えられた….」だった。

一瞬絶句し、その後、思わず聞いてしまった「1時45分ころだった?」
「1時45分に、先生に心停止って告げられた…」

涙が堰を切ったように溢れた。まりんは、帰ってきた。ラピには、分かったんだ。

後で母Bから聞いたことだけど、病院に着いた時、まりんはもうほとんど意識がなかったらしい。先生も、夕方の状態から考えて、これだけ急変するとは思っていなかったようで、とても驚かれたが、まりんを診察して“残念だけど、もう施せることがありません”と…。

先生が、酸素吸入をまりんの口元にあててくださり、母Bはずっと、まりんをなで続けた。

うつろだった目が、一瞬母Bをしっかりとらえ、まりんは立ち上がろうとした。でも、次の瞬間、また横たわり、小さく体を震わせ、まりんは、そのまま二度と動くことはなかった。

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30分ほどして、母Bがまりんと一緒に帰宅した。

まりんは、すやすやと眠っているような顔をしていた。

小さな子達と暮らす以上、いつも覚悟していなくてはならない、この瞬間…。でも、覚悟が何の役に立つだろう。

まりんは、いつもと変わらない様子で、目の前に居る。でも、もう二度と、立ち上がり、甘えて脚のまわりを回ったり、可愛い毛繕いの仕草を見せてくれることはないんだ…。

ケージの中を綺麗にし、ふかふかのタオルを敷いて、まりんを寝かせた。

ラピルナが近寄ってきて、まりんをじっと見ている。りゅうが、隣のケージから、まりんをのぞき込んでいる。

子供達の顔は、みんな悟っているように見えた。

逝ってしまったまりんも、見送っている子達も、これほど愛おしいと、かけがえのない存在だと思ったことはなかった。

このまま、家族で静かに静かに、まりんを見送っていたいと、そう思った。

でも、私達にとって、本当に辛いのは、これからの数日間だった。

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