7月9日にアップした記事、「猫コロナウイルスとFIP☆画期的な最新医療」の中で、「PCRという遺伝子診断法でFIP(猫伝染性腹膜炎)ウイルスが正確に診断可能になった」ということを取り上げましたが、今回の記事は、その続報です。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
猫さんにとって、とても怖い病気の一つに、FIP(猫伝染性腹膜炎)があります。
FIPは、猫コロナウイルスが猫さんの体内でFIPウイルスに突然変異し、さらに、そこに免疫系の異常(ウイルスに対するアレルギー反応)が起こると、発症すると考えられています。
猫コロナウイルス自体は、ほとんどの猫さんが持っているウイルスですし、それ自体、あまり害のないものです(子猫では、軟便や下痢をおこす子もいます)。
従来、FIPの診断は、「猫コロナウイルス抗体価検査」の数値と、「一般血液検査」の数値、腹水や胸水があればその検査、そしてその子の症状などから、獣医師が総合的に判断してきました。が、「猫コロナウイルス抗体価検査」が、猫コロナウイルスの抗体とFIPウイルスの抗体を区別できるものではないために、確定診断するのは、たいへん難しいとされてきたのです。
つまり、致死性のFIPを発症しているかもしれないし、そうではない(ただ抗体価が高いだけで、不調の原因は他にある)かもしれないという、グレーゾーンで苦しむ猫さんと、心を痛める猫ママパパさんが、とても多かったわけです。
それが、「最新のPCR検査法では、FIPを正確に診断できるようになった」というのが、前回の記事の主旨でした。
※「PCR検査」自体は以前からある検査法ですが、今までの検査法では、FIPの確定診断はできませんでした。今回とりあげている検査法は、従来の「PCR検査」とは異なる新たな技術です。詳しくは文末をご覧ください。
この検査によって、FIPでないと診断されれば、抗体価の高さに不安を抱えていたママパパは、ホッと肩の荷を降ろすことができ、また、不運にもFIPと診断されてしまっても、早期に適切な治療を開始することで、延命に期待がかかります。
ただ、私達が前回の記事をアップした時点で、この検査が受けられるのは、東京の赤坂動物病院のみでした。そのことを、とても残念に思っていたところ、10月28日より、「ケーナインラボ」という検査機関で同様の検査「ネコ伝染性腹膜炎(FIP)ウイルス(FIPV)感染遺伝子検査」の受付が開始されました!!!。(※追記※2009年4月より、この検査は「ネコ・コロナウィルス遺伝子検査」に名称変更されました。検査内容・精度は全く変わりありません)
つまり、かかりつけの病院から、この機関に検体(血液など)を提出することで、どの猫さんも検査が受けられるんです。
たまたま受けた猫コロナウイルス抗体価検査の数値が高く、心配しているママさんパパさん。
抗体価が数ヶ月下がらずに、不安に苛まれているママさんパパさん。
FIP発症疑いと診断され、ただただ胸を痛めているママさんパパさん。
こういう検査法が開始されたことを、一度主治医先生とお話しされてみるのも手かと思います。
この検査法が、多くの猫ママ猫パパのサポートとなりますように…。
そして、検査法の進歩と共に、治療法も進歩し、FIPで命をおとす猫さんが1ニャンも居なくなる日が来ることを、心から願います…。
※「ケーナインラボ」社のFIPV遺伝子検査について※
遺伝子を定量的に正確に検出できる技術である「リアルタイムPCR法」は、ホフマン・ラ・ロッシュというドイツの会社が技術特許を持ち、遺伝子解析に広く応用されているものです。
今回、日本獣医生命科学大学の田中良和先生は、FIPVを検出するプローブ(必要な遺伝子を正確につり上げるツール)を開発し、このプローブとリアルタイムPCR法を使ってFIPV遺伝子を高精度に検出する方法を開発されました。
「ケーナインラボ」社のFIPV遺伝子検査は、田中先生の技術を導入するとともに、ロッシュ社からリアルタイムPCR法の特許使用の許可を得ているものです。詳しくはこちらのHPをご覧ください>>「ケーナインラボ」